第30章 残酷
「あの……やはり、こういったことはやめにしませんか」
瑞はいつものように自室に訪れた夕顔に、顔を伏せながら小さく呟いた。
「は? 前も似たようなこと言ってたけど、結局……」
夕顔が視線を合わせ、瑞の体に手を回す。
瑞の身体がビクッと強ばる。
「触らないでくださいっ!」
夕顔の手を振り払った。
夕顔は思い詰めた表情の瑞を見下ろす。
唇を噛んだ。
「……分かった、他に好きなやつでも出来たか?」
「え……」
「だってそうだろ、いきなりそんなこと言いやがって。そいつに操立てるつもりなら無意味だぜ、ここの奴らは金を貰えれば男も女も関係ねえ、誰とでもまぐわう陰間なんだからよお」
「そんなこと言っていません! 私は、ただ……」
瑞は夕顔を睨み、言い返そうとするも先日の一件を思い返す。
どうしても朝顔の名前を出すことが出来ず、俯いた。