第29章 番
「百合……さ……」
百合は瑞を見、青ざめた顔の二人を見る。
瑞の顔は白濁液まみれになっており、二人は急いで前を隠したものの、部屋には帯が散らかっている。
じっくりと見回し、鈴蘭の特徴的な長い二つ結びの一本を掴んだ。
「いたあ! ゆ、百合はん、そないなとこ持ったらあかん、持つとこやあらへん!」
「おい鈴子〜。ケツの青いクソガキの癖にい、おみずを性奴隷にするってえ?」
ぐっと鈴蘭の顔を引き寄せ、声に凄みを効かせる。
「そ、そこまでは言うてへん……!」
「ふざけてんじゃねえよ」
にっこりと笑い、鈴蘭の肩を組んだ。
「あ、桔梗ちんも同罪だから来い」
「ですよねッ!」
呆然とする瑞を残し、ぴしゃんと障子が閉まった。
「……おれ、瑞さんとは清い関係でいたかったんだけど。つーか、少しづつ距離を縮めて、初夜の時に初めてやらしい素顔が明らかになるっつうのがいんじゃねえか……恥ずかしがる瑞さんをおれが抱き締めてやって」
ボロボロに着衣を乱した桔梗が得意そうに零すと、いつも綺麗に結い上げている髪を滅茶苦茶にした鈴蘭が小馬鹿にしたように笑う。
「何年も陰間やってる癖に今更何おぼこいこと言うてんねん、アホちゃう」
「あーっ! またアホって言いやがって! お前人にアホって言い過ぎなんだよ!」