第29章 番
その日の夜。
「なあほんとに行くのかよ〜……」
「そやさかい嫌やったら来んでええ言うてるやろ」
「そっ、それは……お前一人だけで行かせたら何するか分かんねえし」
瑞の部屋の前で二人は足を止める。
ごくっと喉を鳴らし、
「邪魔するで!」
先頭の鈴蘭が障子を開いた。
部屋にいた瑞は急な来客に飛び上がった。
驚いた顔で二人を見る。
「こ……こんばんは、どうしたんですか? 突然」
鈴蘭は一歩前に出ると、瑞に視線を合わせる。
純粋な疑問を向ける瑞を見下ろし、
「あんまり大きい声出さへん方がええで……? これからあんたにはうちらの言いなりになって貰うわ」
「それは一体どういう……」
「自分の胸に手ぇ当てて聞いてみぃ、うちらの命令断れへんはずや。自分、朝顔くんと随分親しいらしいなぁ」
瑞の肌がぶわっと粟立つ。
「き、桔梗さん」
桔梗に視線をやると、瑞を直視出来ずに目を伏せる。
「桔梗に助け求めても無駄やで、桔梗もうちと同じ思いや。あんたのやらしい裏の顔、見してくれるよなあ」
鈴蘭はへたり込む瑞に迫り、ゆっくりと帯を解く。
瑞の眼前で衽を開いた。
興奮気味に細い腰を突き出す鈴蘭を見ていた桔梗は躊躇いがちに言う。
「なあ鈴蘭……おれ、やっぱ……」
「なんや、あんたまだ日和ってるん?清純そうな顔してよお騙してくれたなって言うたらええやん」
鈴蘭がくすりと笑めば、桔梗は顔を赤くして怒る。
「誰が言うかそんなこ……っあ、ば、馬鹿っ!」
鈴蘭は桔梗の背後に回り、素早く帯を解く。
衽を左右に割開くと、袋を大きく膨らませた白い褌が顕になった。
「ごちゃごちゃ言うても体は正直やなあ。ほらお兄さん、可哀想な桔梗を慰めたって。勿論うちのことも忘れたらあかんよ」
瑞を挟み込むようにして二人は左右に立つ。
前袋からいきり立った自身を取り出し、瑞の顔の前に据えた。