第4章 狐の婿入り
「あ〜……? 誰がまだ引っ付いてんだよ」
鬱陶しそうに振り返ると、若草色の頭が見え、
「朝顔〜! 怖かったなあ、ごめんな起こして!」
表情をコロッと切り替え抱き上げた。
朝顔が目を潤ませる。
「夕顔おにいちゃんここお化けいるのお……?」
「いないいない!」
柔らかな温もりをぎゅっと抱きしめて頬ずりする。
「いても兄ちゃんがやっつけてや」
「瑞おにいちゃんあのね、お化け怖いならぼくたちのお部屋に来ていいからね」
「ありがとうございます……」
夕顔が真顔になり、
「夕顔にい差別〜!」
「うるせえ」
「いたいっ」
瑞の頭に拳を落とす。
「な、なんで私に……」
夕顔は朝顔を抱いたまま、タバコ盆から行灯へと火を移す。
「そんでお化けってなんだよ……どうせ瑞が何かを見間違」
部屋がぼんやりと明るくなり、
「うぉおおおおおッ!?」
障子の前に立つ狐面の少年が浮かび上がった。
「きゃあああああッ!」
「ああぁあああああ!」