第4章 狐の婿入り
瑞の口から風を切るような掠れた息の音が漏れる。
目の前に迫る狐面。
月明かりに照らされたそれに、思わず絶叫した。
「うゃあああああああッ!」
瑞の悲鳴を聞きつけた陰間たちが駆け付ける。
「どうしたっ!」
夕顔が勢いよく障子を開いた。
「おっ……おおおぉばけ……!」
瑞は声を震わせながら、へっぴり腰で寝床から抜け出す。
顰めっ面で瑞を見下ろす夕顔の脚によろよろと抱きついた。
「……引っ付くんじゃねえよ、バカ」
夕顔は呆れた顔で瑞の肩を軽く蹴り、
「だ、だって……」
「あーもう、ンだよ……椿も怖いなら来んじゃねえよ」
「こわ、怖くなんかないけどお! ボクが瑞の面倒見るって言ったから、何かあったら来てあげなくちゃって……」
瑞が抱きついた反対側に、涙目で抱きついてくる椿にため息をついた。
「椿さん……!」
「瑞……!」
「あーもう退け! お前ら退け退け」
面倒臭そうに瑞を振り払い、椿を押し退ける。
「そっちで二人で抱き合ってろ」
やっと身軽になった、と眉を弛めた瞬間、夕顔の背中にぺたりと誰かが抱きついた。