第29章 番
「やっぱ有り得ねえって、そんなの」
「まあええから見とき」
それから二人は瑞の尾行を始めた。
「今日は天気が良いのでよく乾きそうですね」
家事炊事を行い、
「お出かけですか? 頑張ってくださいね」
陰間たちと談笑し、
「それと、その大根を下さい」
買い出しに行き、
「ことろことろでもしましょうか? 私が鬼になりますね」
しんべこ達と遊ぶ。
下働きとしてお手本のような、至って健全な一日を送る瑞。
桔梗は眉を八の字にした。
隣の鈴蘭を見、ぶっきらぼうに呟く。
「もう無意味だからやめようぜ〜。おれ、せっかくの休みだったんだけど……」
「おかしいなあ」
鈴蘭は首を傾げる。
しんべこ達はたっぷり瑞と遊び、満たされた様子で帰っていく。
そこに唯一残っていた朝顔。
「朝顔、さん……どうしましたか、お部屋に戻らなくても良いのですか?」
朝顔は瑞の脚に抱き着く。
上目遣いに見上げ、
「瑞おにいちゃん……、いーい?」
ぐりぐりと股間を押し付けた。
瑞は彼の言わんとすることを察して俯くも、
「……はい……」
静かに頷いた。
そのまま二人は厠の中に入っていった。
その様子をぽかんと見ていた二人。
「……何ぼーっとしてるんや! 追うで!」
「おっお前もぼけっとしてただろっ!」