第28章 狼と羊と子羊と
「す……すごい……瑞おにいちゃん……」
瑞はかくんと頭を垂れ、意識を手放した。
「っとお」
百合は瑞を受け止め、たらんと垂れた手を振って笑う。
「朝ちゃん、おみず落ちちゃったからあ。色々名残惜しいだろうけどお、今日はとりあえずおしまいね〜」
「う、うんっ……」
朝顔はズキズキと痛い程に疼く下半身をそのままに、素直に首を縦に振る。
百合はにやっと両目を細めた。
「また今度遊んでもらいなあ? おみず、これから朝ちゃんの言うことならなんでも聞いてくれると思うよお。その代わり普段はいつも通りにしてなあ、おみずも朝ちゃんに避けられてんの気にしてたしい」
朝顔は柔らかな両頬を朱に染め、こくんと頷く。
「あ、でもあんま調子乗った命令したら朝ちゃんでもシメるから」
「シメ……?」
「泣かせないでやってってことお。こいつ泣かせていいの俺ちゃんだけだからあ」
頬に涙の流れた痕のある瑞の顎を持ち、ニコッと笑った。
朝顔は元気よく言う。
「うん! ぼくぜったい瑞おにいちゃんに酷いことしないよ!」
「いい子いい子〜。マジで朝ちゃん兄貴たちに似てないねえ」
百合は楽しそうに朝顔の頭を撫でた。
「そー言えばあ、おみずって色んなやつと相性良さそうだし……俺ちゃん的に美味しい場面いっぱい見れそう〜」
百合は朝顔を部屋まで送り、自分の布団に寝かせた瑞を見て呟く。
「……つーか、俺ちゃんとおみずっつー組み合わせもアリかも」
にっと口角を上げ、
「それが俺ちゃんの幸せかもしんねえ」
鋭い八重歯を覗かせた。