第4章 狐の婿入り
萩は瑞を優しい目で見下ろし、その小さな背をぽんぽんと撫でる。
「何も分からなくて不安な中こんなやかましいとこに連れてきちまって申し訳ねえが、すぐに慣れるさ」
肩に手を置き、歯を見せて笑った。
「早く思い出すといいな」
瑞も笑顔で頷く。
簡単な寝支度を終え、
「それじゃあ瑞は今日からここで寝てくれ。普段はたまーーに旦那が寝に来たりしてるけど、ほとんどないからな。それに今日は帰ってこないし……それじゃ、おやすみ」
「本当にありがとうございました。萩さん、おやすみなさい。皆さんにもよろしくお伝えください」
萩に案内された二階の一室で漸く床に就いた。
久方ぶりに寝る布団はあまりにも気持ちが良くて、落ち着かない。
目を閉じても心臓は逸るばかり。
今日会った人のことを思い返したり、自分が何者なのかを考えたりすればますます眠気が遠ざかる。
何度か寝返りを打ち、鼻から息を零す。
「んー……」
うっすらと瞼を開くと、何故か顔に触れる寸前の距離にある白い狐と目が合った。