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影の花

第28章 狼と羊と子羊と


それから日は経って。

「おみず〜」

「百合さん」

廊下を歩いていた瑞に、百合が声を掛ける。

こちらに向かってブンブンと大きく手を振る百合に、瑞は立ち止まって微笑む。

百合は瑞に向かって身を乗り出し、歯を見せて笑う。

「今ひまあ? 俺ちゃんといいことしな〜い?」

「時間はありますが……良いことってそんな、意味深な」

瑞が笑いを零すと、百合は無邪気な笑みから意味ありげな微笑に変えた。

瑞の肩に腕を回して引き寄せ、耳元で囁く。

「……でもさあ、おみず、夕夕とはしてるっしょ? い、い、こ、と」

「え……」

瑞の顔からスーッと血の気が引く。

百合は身体を押し付けながら、瑞の腰を撫でる。

「そういうのすんの、不味いんじゃねえのお。バレたらさあ、うちのハゲがキレ散らかすよお?」

「も……申し訳、ありません……」

「いやい〜よ別にい、俺ちゃん謝って欲しいわけじゃないしい」

百合はヘラっと笑って手を振る。

困り果てた目で見上げる瑞に、小さく喉を鳴らす。

瑞の尻をぎゅっと掴んだ。

「あッ……」

瑞の腰がぶるっと震え、鼻から熱い息が抜ける。

「それよりさあ、俺ちゃんともいいこと、してくれるよねえ?」

百合は瑞に有無を言わさず、自室へ引っ張り込んだ。
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