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影の花

第28章 狼と羊と子羊と


「んで〜? どったの朝ちゃん」

百合の部屋で、朝顔はもじもじと話を切り出す。

「うん……あのね、この前夜に目が覚めてね。瑞おにいちゃんの部屋の前を通りがかったら、昼顔おにいちゃんもいて。なんか、変なことしてたの」

百合の両目は面白そうに弧を描く。

それを言葉には出さず、淡々と話を促す。

「へえ〜。変なことってえ、どういうのお?」

朝顔は顔を紅潮させ、そわそわと指先を弄りながら言う。

「う、うんとね……暗くてよく見えなかったけど、瑞おにいちゃん変な声出してたの。夕顔おにいちゃんがなんかしてて、だから、夕顔おにいちゃんが瑞おにいちゃんのこと、いじめてるんじゃないかなって」

百合の表情は一層楽しげになる。

朝顔は俯いた。

「ぼく……二人とも好きだから、喧嘩しないで欲しいけど、言えないの……」

「なるほどねえ〜。それはびっくりするよねえ」

百合はケラケラと笑いを零す。

「うん……」

「でも大丈夫〜、多分っつうか、絶対喧嘩じゃねえから。夕夕はおみず虐めてねえよ」

「ほんと?」

ぱあっと表情を明るくする朝顔に、百合は堂々と頷く。

「ほんとほんとお。俺ちゃんに任せて〜」

百合は先程の扇子を取り出し、勢いよく広げた。
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