第28章 狼と羊と子羊と
朝、瑞が食事の片付けをしていると、朝顔がこちらをじっと見つめていることに気がついた。
「どうしましたか?」
優しく微笑みかけると、朝顔は驚いた顔になる。
「うっ、ううん……なんでもない!」
くるっと背を向けて駆け出して行った。
瑞は心配そうに眉を下げた。
「どうしたんでしょうか……」
朝顔の出て行った方向を見つめていると、
「おい」
「ひゃああッ!」
突然夕顔から肩を組まれた。
耳元に掛かる声と吐息に声を跳ね上げ、夕顔の手を振り払う。
「いきなり変なとこ触らないで下さいよ!」
「今は触ってねえだろ!」
「い、今はってそんな言い方……」
瑞は顔を顰め、ふうとため息をつく。
「それで、何の用ですか」
「今朝顔と喋ってただろ? その……なんか言ってなかったか?」
瑞は気まずそうに下唇を噛み、小さく吐き出す。
「いえ……何か言いたげにしていたのですが、私が声をかけると逃げてしまって……」
「……やっぱそうか」
夕顔は瑞の答えにはあと息を吐き、片手で頭を抑えた。