第3章 愛情は隠し味
萩が咳払いをする。
「ンン、まあこんな感じだ。まわしももう一人、蘭っていうのがいてな」
桜が嬉しそうな顔で頷く。
「蘭ちゃんはまだまだ現役で女の人相手にしてるけど、僕らのまわしもしてくれてるんだよね」
「蘭ねえってお外だとどんな感じなの?」
「あ、これから客入ってるやついる?」
「えー? 蘭ちゃんは外でもいつも通りだよ。夕顔〜、僕はまたこれから出るけどなんで?」
「そういえば蓮華兄さんはいつまわしになるんすか? ねー睡蓮くん」
「知らん、兄さんの話を僕にするな」
「じゃあ誰にすんの!? 睡蓮くん弟じゃん!」
「……知らん」
「牡丹、後から碁に付き合ってくれんか」
萩のこめかみが大きく脈打った。
「……うるせーぞお前ら! 早く飯食って片付けろ!」
一喝すると、陰間たちは慌てて散り散りになっていく。
萩は一息つき、ぽかんとしている瑞の肩を叩く。
「まだいっぱいいるけど、今はとりあえずこんだけだ。あとのはまあ、そのうちな」
若干力のない声で言い、苦笑いした。
「とりあえず、瑞も今日は疲れただろ? 風呂も入ったみたいだし、あいつらが戻ってくるまでに歯磨き済ませて寝ちまいな」
「……はい」
萩にそう言われると急に眠気が押し寄せてくるようで、瑞は欠伸をひとつ噛み殺した。