第27章 変化
「昔の萩さんって、すっごく初々しい感じの男の子だったんだよね。線も細くて、なで肩で、色白で、華奢で」
藤の口から語られる少年、あるいは青年期の萩の様相に瑞は目を瞬かせる。
「信じられない?」
藤はそんな瑞を見て可笑しそうにくすりと笑う。
「でも本当だよ、あの頃の萩さんは自分の癖毛を気にして何十分も櫛で髪を梳いたり、一つに括ったりしてね。出かける前には一人で鏡を占領して蘭さんに怒られたりして」
瑞はまだ歳若い萩の可愛らしい様を想像し、頬を緩ませた。
藤も微笑んで頷く。
「兎に角、とっても可愛らしかったのさ」
そして、表情を翳らせた。
「でも、ある時萩さんに好きな人が出きたんだ。お客さんの一人に本気になっちゃって」
「そんなことがあったんですね」
「うん。相手もまあ、それに気をよくして。店外で逢い引きしたり、それなりに長く付き合ってたみたいだ」
藤は声を落とす。
「だけど、ある時期からあれ程足繁く通っていた男が段々顔を見せなくなっていった。店外でも会わなくなったから、お金が足りなくなった訳でもない。萩さん……すっごく心配して、やつれちゃってさ。もう見てらんなかったよ」
瑞はまだ青い彼の心情を思い、暗い顔になる。