第27章 変化
物憂げな顔で広間に下りてきた瑞に、通りがかった藤が声を掛ける。
「瑞さん、浮かない顔だけど。夕顔の相手で草臥れたの?」
「それは慣れました……」
「それはいいね」
瑞の返答に藤はニコニコと微笑む。
そこで瑞はハッとし、
「べ、別に私が疲れた顔をする原因が必ず夕顔さんという訳では」
「懸念事項は他にもあるもんね」
「そういう意味でもなく!」
瑞は優しい笑みを浮かべる藤を見つめる。
困り顔で話を切り出した。
「その……萩さんの事で」
瑞から一通り先程の話を聞いた藤。
「……ふーん。そっか、萩さんそんなこと言ってたんだ」
「ええ。その……私などが励ます、と言っては烏滸がましいのですが。本当に素敵な方だと思いますし。あまり卑下しないで頂きたいのです」
瑞はそこではにかみ笑いをする。
「まあ、萩さんの謙遜かもしれませんが」
出過ぎた真似でしたかね、と零す瑞に、藤は首を振る。
「……謙遜じゃないと思うな」
柔らかな紺色の髪を耳にかけ、ぽつりぽつりと語り始めた。