第27章 変化
萩は自嘲気味に言い、
「どうにもあいつらが心配でな」
目を伏せた。
「ズルズルやってるうちにこんな歳になっちまった。そんでいつの間にやら兄貴分になり、皆のまとめ役と来たもんだ。もうここに骨を埋める気概でいるさ」
瑞は萩の背中に視線を落とす。
太い首筋、骨格の良い肩、がっちりした背中。
更に視線を下げれば、逞しい腰付き、筋肉の張った脚。
豊かな焦げ茶色の髪、日焼けした肌。
翠玉のような瞳に、彼特有の落ち着いた声色も魅力的なものだった。
「私は萩さんのこと、素敵だと思いますけどね」
「瑞はそう言うけどなあ。実際、俺みたいなのは需要がねえんだ。折角高い金出して遊ぶんだ、男も女も、どこにでもいそうな野郎より女と見間違うような美男の方が良いに決まってるからな」
萩はそこで言葉を切り、もういいぞと笑った。
瑞もそれ以上口を喋ることはせず、頷いて萩の腰から下りる。
「ああ楽になった。……そう言えば、瑞は俺に何の用事だったんだ?」
萩が体を起こして訊ねる。
「萩さん、随分と長い時間お仕事をされていたので。息抜きにお茶でも飲まないか誘いに来たんです」
瑞の答えに一笑し、
「それなら今ので充分だ。もう疲れなんて吹き飛んじまった」
萩は机に戻る。
「あ、でも……良ければ水菓子なども出しますし、無理は体に良くないので」
萩は尚食い下がる瑞の頭をぽんぽんと撫で、
「ねぎらってくれてありがとうな」
優しく微笑んだ。
瑞はぼっと顔を赤くし、仕方なく腰をあげる。
「……くれぐれも無理はしないでくださいね」
「おうよ」
瑞は障子を閉め、ふうとため息をついた。