第27章 変化
夜遅く、萩は帳簿と睨めっこをしていた。
帳面には綺麗な文字で目録と書かれている。
内容は影の花の収入、陰間たちの給金、生活費の事など多岐にわたる。
日付や店の名前、場所、関わった人の名前にまで及ぶ情報の全てがひとつ残らず几帳面に記されていた。
筆を置き、一息ついた。
んんと腕を伸ばし、ゆっくりと身体を解す。
「萩さん」
「おお。その声は瑞」
萩が振り返ると、瑞は失礼しますと一声かけて障子を開いた。
「どうした?」
親しげに笑いかける萩だが、疲れた様子は否めない。
瑞は机の上の帳簿と彼の顔を見比べ、困ったように微笑んだ。
「だいぶお疲れのようですね」
「まあなあ」
萩がもう一度伸びをすれば、強ばった身体がバキバキと音を立てる。
瑞はじっと見つめ、にこっと微笑んだ。
「良ければお揉みしましょうか」
「ん?」
瑞は萩の後ろに回り、彼の厚みのある肩に両手を乗せた。
そして指にぎゅっと力を込めた。
「おおぉ……!」
萩は思わず声を漏らす。
瑞はぎゅっぎゅっと力を込めて双肩を揉み込んでいく。
「やっぱり凝ってますね」
萩は気持ち良さそうに表情を弛ませた。