第26章 紅白
瑞がほっと胸を撫で下ろした時。
「あ」
桃が躑躅の浴衣の帯を解き、
「うー!」
裾を真上に捲り上げた。
躑躅の白い脚と、紅色の褌が顕になる。
桃はもこっと盛り上がった中心部を指さし、瑞に笑いかけた。
「ら! 躑躅も!」
躑躅はバッと裾を下ろす。
きょとんとする桃。
「う?」
「あ……あの……っ、桃さん、それは……」
瑞は顔を真っ赤にし、しどろもどろになる。
「見……見ましたね……」
躑躅は火が出るほどに頬を紅潮させながら、薙刀を掴んだ。
「……えっ」
翌日。
瑞は、朝食の膳を前に、魂が抜けたようにぼーっと座り込んでいる。
そこに蓮華が現れ、瑞の肩を叩いた。
「やあ。昨日はお楽しみだったね。君たちの激しい声、バッチリ聞こえていたよ」
「おかげで寝不足なんだよ、クソ……」
奥の席に座る夕顔が悪態をつくも、瑞の反応は今ひとつ鈍い。
「……瑞くん?」
蓮華の頭に疑問符が出ると、瑞はようやく口を開いた。
「本当に……殺されるかと思いました……」
「え? そう言えば、瑞くん、その傷は」
瑞の鼻の頭には薄い一本の切り傷が刻み込まれていた。
「聞かないでください……これだけで済んだのが、奇跡なんですから……」