第3章 愛情は隠し味
「牡丹もモテるんじゃろ」
撫子は呆れる萩を気にする様子もなく、自分の隣に座っている青年に懐っこく話しかける。
「……いや……」
唐突に話しかけられた牡丹は静かに首を横に振る。
無骨な雰囲気の彼は、撫子と同じく地味な色合いの着物と、黒の羽織を身に付けている。
健康的な色の肌と、前髪をかきあげた無造作な髪型が彼の実直さを物語っている。
目尻の切れ込んだ銀色の瞳と、頭頂部の左右で白と黒に分かれた髪色が印象的だった。
撫子が何かを閃いた顔になる。
「そうじゃ、瑞やったっけ? 今日牡丹と風呂入っちみ、おもろいぞ。こいつは髪も面白いけどな、身体に絵ー描いちょるけえ見せてもらい」
牡丹の肩に腕を回し、自分の方に引き寄せる。
そのまま牡丹の鎖骨に手を滑らせた。
「ン……」
牡丹がピクンと眉を跳ねさせる。
瑞はきょとんと首を傾げた。
「身体に絵、ですか?」
「ああわからんのか、絵っちゅうんはモンモ」
「撫子!」
「なんじゃー」