第26章 紅白
「う、動かないでください……かかかか懐紙を……!」
狼狽えながらも桃の顔を拭こうと立ち上がった時、
「桃おおおおお!」
勢いよく障子が開いた。
そこには寝間着姿で、何故か薙刀を手にした躑躅。
「つ、躑躅さん……」
息を切らし、ほとんど半狂乱になりながら、半泣きで瑞に近づく。
「瑞さん、桃は見ませんでしたか! かかか鍵ッ、鍵が、桃っ……?」
「うー!ぎっ、ぎ! あうー!」
桃は突然現れた躑躅に嬉しそうにし、大きく手を上げて駆け寄る。
その手には部屋の鍵が握られていた。
躑躅はそれを受け取り、安堵する。
「あ、あぁ……桃、貴方が持っていたのですね……わたしの腰から取って、自分で開けて抜け出したのですか? そんなことまで出来るようになって……」
泣き顔と笑顔を半々にしながら、桃の顔にぺたぺたと触れる。
「……ん?」
椿の指先に生ぬるい液体が付着した。