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影の花

第26章 紅白


「瑞!」

「瑞さんが?」

「萩、瑞、来た。ご飯!」

にこにこと言葉を紡ぐ。

躑躅は微笑み、優しく桃の頭を撫でる。

「それはそれは。今日はわたしの帰りが遅かったので、二人が持ってきて下さったのですね」

「むふー」

桃は得意げに胸を張る。

「それでは……わたしだけ軽く食べてきましょうかね……」

考えていると、桃が躑躅の袖を引っ張った。

「躑躅」

「はい? どうしたのです」

桃は身振り手振りをし、懸命に何かを伝えようとする。

「瑞……うあ、え、んん。する……ほかの、と。うー、る?」

こてんと首を傾げた。

躑躅は桃の話の内容を理解し、顔を赤くする。

「えっ……瑞さんに、まぐわいの経験があるか否か、ですか」

真っ直ぐな視線を投げてくる桃。

躑躅は言葉に迷いながらも、瑞の顔を思い返す。

「さっ、さあ、なにぶん瑞さんには記憶がございませんし、私もここに来る以前は存じ上げておりませんが……少なくとも、ここに来てからはそのような経験はないのではないのでしょうか」

俯き、もじもじと頬を赤くした。

「詳しいことは……分かりませんが……」

「うー」

「な、納得しましたか? 全く、急に何故そのような事に興味を……」

ブツブツと呟く躑躅を見ながら、桃は何かを思案していた。
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