第25章 逆襲の下僕たち
百合は竜胆の反応に楽しそうに笑い、夜の街に視線をやる。
人の流れを見下ろしながら、
「それと、俺ちゃんはああいうの趣味じゃねえけどお、人がやってんの見んのは好き〜。戸惑いながらも変な趣味に目覚めちゃうおみずとか、普段ぶすっとしてんのに人目もはばからず喘いじゃう菖蒲っぴとか、ちょー堪んなくね」
興奮気味に言い涎を飲む。
竜胆は呆れ顔で微笑する。
「百合さんてほんま、昔から人くっ付けるん好きですよね」
「何それ〜その言い方さあ、俺ちゃんがお見合いおばさんみたいじゃん。俺ちゃんはただ、人が仲良くイチャイチャしてんの見んのが好きなの。照れたり翻弄されたりしてる奴の顔って、くっそ可愛くね? まじで満たされるう」
百合は上機嫌に言い、楽しげに表情を綻ばせる。
「……ほんなら、瑞兄やんがほんまに誰かとくっついたらどう思わはるんです? 今日みたいなお遊びとちゃうくて」
「あ?」
百合が顔をあげると、竜胆は何か言いたげなな表情で見つめていた。
「百合さんは自分の幸せとか考えたことあります?」
百合は一瞬言葉に迷い、目を伏せる。
「知らね。そーいうの諦めてるしい。俺ちゃんは人の見てるだけで幸せだしい」
小さく言い、目の端で竜胆を睨んだ。
「なんなのお〜……マジ、そーいうのいらねえんだけどお」
竜胆はすぐにいつもの笑顔に戻り、顔の前でぶんぶんと手を振る。
「いやいやいやあ、今の忘れてください! ほんま妙なこと言うて申し訳ないですわ! ほな僕はそろそろ桔梗のアホの所にでも行ってきますわあ」
竜胆はくるっと踵を返し、その場を後にする。
百合は顔を顰め、煙管を咥える。
煙を舌で転がし、湧き上がる気持ちから目を背けるように鼻から息を抜けさせる。
「意味わかんね〜……」
地味に痛む額を手で抑えた。