第25章 逆襲の下僕たち
夕顔は眉根を寄せる。
「……うちにまともなヤツはいねーのかよ」
「夕顔さんもなかなかな物だと思いますが……」
瑞がぽつっと洩らすと、夕顔は即座に立ち上がる。
「あぁ!?」
「そ、それ! すぐそうやって怒るじゃないですか!」
「てめぇがすぐ怒らせてくっか」
夕顔が瑞に突っかかろうとした時、
「いいから遊べよ」
百合が背後から後頭部を鷲掴みにした。
顔を寄せ、普段笑っている目を開眼させながら迫る。
「は……はい……」
夕顔は半泣きでコクコクと頷く。
百合の手から解放されると、拳を突き上げながら高く飛んだ。
「……よっしゃあみんなで遊ぼうぜええ!」
「いえええええい!」
竜胆も全力で応える。
不自然な程の気分の盛り上げと笑顔。
よく見れば、二人の額には冷や汗が光っている。
「うえーい。いいねいいねえ〜、それっぽくなってきたあ」
百合はぱちぱちと手を叩いて嬉しそうにする。
あまりの恐怖政治にドン引きする菖蒲。
「そ、それで百合さん、殿様勝負とはどんな遊びなんですか?」
収縮の付かなくなりそうな気配を察知し、瑞は百合に話を振った。
「俺も気になりますッ!」
「僕も僕もお! 百合さん、教えてください!」
夕顔と竜胆も食い気味に頷く。
「ん〜っとねえ。まずみんなで一本ずつこのくじを引きま〜す。はい菖蒲っぴからあ」
「はい……」
百合は握っている複数本の箸を差し出す。
菖蒲を筆頭にそれぞれ箸を引き抜く。
最後の残った一本を百合が取る。
「ふむふむ」
「それでどうするんすか?」
「あれ、箸に何か書いてありますね」
瑞が箸の先端に書かれた文字を見て不思議そうに呟く。