• テキストサイズ

影の花

第25章 逆襲の下僕たち


菖蒲はよく読み込まれた草双子を見ながら、吐息を漏らした。

それには当然瑞とそっくりな見た目をした主人公、日向丸の鬼畜っぷりが描かれている。

菖蒲は日向丸の堂々たる傍若無人ぶりに法悦し、うっとりとする。

頁を捲り、瑞に日向丸の台詞を読み上げて貰ったことを思い返す。

気持ちのこもった長尺の罵倒、耳元に伝わる声の震え、瑞の冷めた視線。

ゾクゾクと背筋を震わせた。

「あぁ……やっぱ、あれは良すぎた……日向丸が降臨してた……」

瑞と創作の登場人物は違うと頭では分かっていても、なかなか割り切ることが出来ない。

それほどまでに瑞はそっくりで、菖蒲にとって衝撃的だったのだ。

瑞を目にする度、愛しの極悪非道な彼のことが脳裏をよぎる。

妄想は加速していく一方で、菖蒲は悶々とした気持ちを持ち続けていた。

流石にそのある意味で純粋な欲求を本人に向ける訳にもいかず。

「日向丸、こ、これ……いくら敵役と言えども、駄目だろ……!」

菖蒲は頁を進めては、興奮に息を荒くした。

「ふひ……これ……作者変態だな……日向丸……瑞……日向丸……瑞……」

ボソボソと独り言を言って楽しんでいると、

「菖蒲っぴ趣味悪ぅ〜」

背後から間伸びした声がした。
/ 402ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp