第25章 逆襲の下僕たち
菖蒲はよく読み込まれた草双子を見ながら、吐息を漏らした。
それには当然瑞とそっくりな見た目をした主人公、日向丸の鬼畜っぷりが描かれている。
菖蒲は日向丸の堂々たる傍若無人ぶりに法悦し、うっとりとする。
頁を捲り、瑞に日向丸の台詞を読み上げて貰ったことを思い返す。
気持ちのこもった長尺の罵倒、耳元に伝わる声の震え、瑞の冷めた視線。
ゾクゾクと背筋を震わせた。
「あぁ……やっぱ、あれは良すぎた……日向丸が降臨してた……」
瑞と創作の登場人物は違うと頭では分かっていても、なかなか割り切ることが出来ない。
それほどまでに瑞はそっくりで、菖蒲にとって衝撃的だったのだ。
瑞を目にする度、愛しの極悪非道な彼のことが脳裏をよぎる。
妄想は加速していく一方で、菖蒲は悶々とした気持ちを持ち続けていた。
流石にそのある意味で純粋な欲求を本人に向ける訳にもいかず。
「日向丸、こ、これ……いくら敵役と言えども、駄目だろ……!」
菖蒲は頁を進めては、興奮に息を荒くした。
「ふひ……これ……作者変態だな……日向丸……瑞……日向丸……瑞……」
ボソボソと独り言を言って楽しんでいると、
「菖蒲っぴ趣味悪ぅ〜」
背後から間伸びした声がした。