第24章 自由人
「それなのに、どうして秘密って人に言いたくなるんだロ。今日、初めて梅以外の人にお面を外した顔を見せたくなったヨ。見せたらどんな顔をするか、受け入れてくれるか、変わってしまうか気になったんダ」
「隠すって疲れるさかいな。自分を偽るのんはしんどいし……誰かに言うことで楽になれるんとちゃうか。それに、好きな人に弱み見してもらえるのんは案外嬉しいもんやで」
鈴蘭はそう締めくくり、煙草盆を引き寄せる。
煙管を取り出し、煙草に火をつけた。
口内で煙を味わい、美味しそうに白い息を吐き出す。
菊を横目で見る。
「そやけどあんたのはあれやん? 商売のために着けてるんやん? 客の前では外してるって聞いたで」
「それ、方便だヨ」
鈴蘭はぴたっと固まった。
「……ちゅうことはそれ、嘘なん? ほんまに梅ちゃん以外には素顔見してへんの?」
「うン。そう言ってたら他のみんなは納得するでしョ。お客さんには見せてるって言ったら、そういうものなのかって、スっと興味がなくなるノ。お客さんにはもっと仲良くなったら見せる、恥ずかしいから嫌って言って引っ張ってるヨ」
鈴蘭は感服し、狐面をぴったりと貼り付けたままの彼を改めて見つめる。
「あんた凄いなぁ……! 凄い胆力やな、少し尊敬したで……。ほ、ほなあんたなんで顔隠してるん? 今まで気にならへんかったけど、急に気になってきたで」
菊はそれには答えず、
「鈴蘭さんありがとウ!」
爽やかな声で言って立ち上がった。
鈴蘭の部屋から走り去っていく。
「なあて!」