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影の花

第24章 自由人


瑞は尻を片手で押さえ、声を震わせる。

「あ、薊さんそういうところ本当に良くないですよ!」

「すぐナマ言いやがって……ああ? 三枚に下ろしてやろうか」

「じゃあ私に薊さんのことを気にして欲しいんですか!? 違うでしょう!?」

「……よく覚えとけ、俺は長文で否定されるとムカッ腹が立つんだよ!」

薊は瑞を追いかけ回す。

取り残される菊。

「薊さん、早く菊を連れて行ってあげてください……」

梅は痛む頭を抱え、力無く呟いた。

「……ていうことがあったんだけド」

菊が話し終えると、それを黙って聞いていた鈴蘭は眉間に皺を寄せた。

「それで? あんたうちに何が言いたいん。怪しいお面して、けったいな格好して」

鈴蘭は薄紅色の長い二つ結びを靡かせ、包帯の巻かれた両手を床と平行に伸ばして大袈裟に肩をすくめる。

「鈴蘭さんもなかなかだヨ」

「喧嘩売ってんなら買うで」

「違う違うヨ。どうして人って何かを隠したり、人の秘密を暴きたがったりするのかなっテ」

「知らんわそんなん」

菊は、ツンと顔を背ける鈴蘭をじっと見つめる。

「鈴蘭さんなら分かるかなって思ったんだヨ。顔隠し仲間だかラ」

菊の何もかも見透かしたような物言いに、鈴蘭は言葉につまった。
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