第23章 恋の魔法
「わ! 蓮華にい何してるのお?」
日と場所は変わって、蓮華の部屋。
部屋は妖しげな薬や性玩具で溢れかえっている。
「ちょっと部屋の片付けをしていたところだよ」
「片付けえ? 散らかしてるの間違いじゃないのお、これ……」
蓮華は机の引き出しを開き、中にあった紙包みを取り出す。
「おや。こんなものがあったのか」
蓮華はゆっくりと包みを開く。
「なになに?」
椿はひょいと中身を覗き込み、顔を歪めた。
「何それ気持ち悪〜い……」
紙の中には二つの黒い塊が入っている。
小さな炭の塊のようなそれには、よく見ると頭や尻尾、手足まで確認出来る。
蓮華はそのうちひとつをつまみ上げ、
「これはイモリの黒焼きって言って、惚れ薬さ。雄のイモリの黒焼きを自分に振り掛け、雌のイモリの黒焼きを意中の相手に振り掛けると恋が実ると言われているね。振りかけられた人は、振り掛けた人を好きになってしまうのさ」
「惚れ薬!?」
興味津々といった顔で食いつく椿に、蓮華は薄く笑う。
手にしたそれを丁寧に包みに戻した。
「……君にはまだ過ぎた代物さ、椿くん」
「まだなんにも言ってないもん!」
椿はぶすっと頬を膨らませる。
「これは鍵のかかる引き出しにしまっておこうか」
「いーだ」
蓮華は再度引き出しの奥に惚れ薬を仕舞う。
椿は首を傾げた。
「それにしてもそんなの、どこで手に入れるのー?」
「淫薬のお店で普通に買えるよ」
「ふーん」
黒焼きを免れたいもちゃんとりっくんは、今日も菫の部屋で楽しげに泳いでいるという。