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影の花

第23章 恋の魔法


「菫ー、おったぞー! これじゃのお!」

それを切り裂くように、撫子が声を張り上げた。

見ると、瑞と昼顔からはるか遠くで何かを掴み上げている。

「ほんとですかあ! ……あ! ぼくも見つけましたあ!」

菫はバシャバシャと水音を立てて撫子の元に駆け寄り、歓声をあげた。

「いないぃ〜……」

一方、半泣きで声を上げる梅。

「……僕、何となく梅くんには見つけられないと思ってました」

「ちょ、ちょっと昼顔さんッ」

それから暫くして。

「そろそろ帰るぞー、あんま遅くなると暗なって危ないしのう」

未だにイモリを見つけられず、必死に川べりを漁っている梅。

撫子が声をかけると、

「で、でも……っしゅ!」

名残惜しそうに言うも、くしゃみを漏らした。

「梅さん、帰りましょう? 風邪をひいては大変です。私で良ければまた付き合いますよ」

瑞は梅に優しく言い、自分の羽織をその細い肩に掛けてやる。

「瑞さぁん……」

梅は目を潤ませた。

そんな光景を黙って見ていた菫は、とてとてと梅に近寄る。

濡れた袖をクイッと引っ張った。

「あ、あげますこれ」

「え……」

菫の差し出した風呂桶には、二匹のアカハライモリが泳いでいた。

「梅お兄さん、イモリ、すっごく欲しそうだったから。ぼくは、他にも色々捕まえられましたから……」

「菫くんっ……!」

梅は感激し、

「ええ話じゃのう」

撫子はしみじみと呟く。

「それじゃあ……みんなで帰りましょう!」

瑞は笑顔で言った。
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