第23章 恋の魔法
想像以上の大所帯になりながら、影の花を離れた一行は街を抜け、田舎の方への歩みを進める。
「撫子お兄さん、素敵なタモをありがとうございます!」
「おうおう。なかなかええじゃろ」
真新しいタモを手にホクホク顔の菫、楽しそうな撫子。
「たまにはこういうのもいいですねー」
爽やかな顔の昼顔、真っ青な顔の梅。
「梅さん……虫は苦手だったのではないですか? 大丈夫ですか?」
梅は顔面蒼白で瑞を見る。
心配そうに下がった眉、優しげな瞳。
梅はぎゅっと拳を握った。
「……大丈夫です、これはただの虫取りではなく……イモリ取りですから……!」
「初めて知りました、梅さん……そんなにイモリが好」
「違います!」
「で、ではなぜ……」
釈然としない瑞を置き、景色はどんどんと木が増え、人が少なくなっていく。
先頭の昼顔が足を止めた。
「着きましたよー。前は多分、ここら辺で見た気が」
顔を上げると、緑の香りがする湿った風が吹き抜けてくる。
目の前には鬱蒼と茂った森、そして綺麗な小川が流れていた。