第23章 恋の魔法
「菫くん、ちょっといいかな。撫子さんが呼んで……」
そこに現れた梅。
障子を開き、
「うわあ!?」
部屋中に溢れる虫にひっくり返った。
菫は慌てて梅の元に駆け寄る。
「だっ、大丈夫ですか梅お兄さん……! まだ、ぼくの部屋に慣れませんか?」
「いいいぃ……む、虫は、ちょっと、やっぱり……」
瑞も梅の体を起こしてやり、青ざめた顔を覗き込む。
「苦手ですか?」
梅は白っぽい顔を更に白くし、コクコクと高速で頷く。
唇まで血の気が引いている。
「それはそれは……」
「撫子お兄さんが呼んでるんですね、梅お兄さんっ、教えてくれてありがとうございます! この前お願いしたタモが出来たのかも……!」
菫は嬉しそうに部屋を飛び出して行った。
「じゃあ……私たちも行きましょうか」
「そうですね」
それに合わせるように腰をあげる瑞と梅。
「あ、あれ? 瑞さん達も出かけるんですか?」
梅の問い掛けに、昼顔は笑って頷いた。
「これからみんなでイモリを取りに行くんだよ」
「イモリ……」
「これです、これ」
瑞は菫が放り出していった虫譜を優しく拾い、イモリの描かれた頁を梅に見せる。
梅はその絵と名前に思いを巡らせ、何かを考え込む。
「……瑞お兄さーん! 昼顔お兄さーん! 撫子お兄さんも着いて来てくださるそうですっ!」
下から菫の明るい声がし、昼顔は微笑む。
「じゃあ瑞さん、そろそろ行きましょうか」
「梅さん、それでは」
「……待ってください!」
梅は昼顔と瑞に追いすがり、驚いた顔の二人にこう宣言していた。
「それ、わ……わたしも着いて行っていいですか!?」