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影の花

第23章 恋の魔法


「あの、これ……ぼくの宝物なんです」

菫はばさっと虫譜を広げた。

「わ……!」

虫譜には、様々な虫が正確に描かれている。

「凄いですねえ……」

瑞が感心すると、菫は嬉しそうに頬を染める。

小さな手で頁を捲る。

「いつか、ここに載っている虫をみんな捕まえるのが夢なんです。それで、今はこれを捕まえたいんです。虫とは少し違いますけど」

菫の指差した先には、長さは子供の手のひら程で、短い前足と後ろ足、長い尾を持った生き物の絵がある。

皮膚はざらつき、背中は黒、腹は赤地に黒の斑点模様の奇っ怪な見た目でありながら、どことなく可愛らしいものだった。

「これはヤモリとは違うんですか?」

「違うんです。水の中に住んでいるんですよ」

昼顔はううんと唸り、口を開いた。

「……僕、これ見たことあるかも」

「ほ、ほんとですか!?」

菫はぱあっと顔を明るくする。

わいわいと盛り上がる三人。
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