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影の花

第23章 恋の魔法


「ありがとうございます!」

きらきらとした笑顔でお礼を言った。

「どうぞ、入ってください! この子は鉢に入れておきますっ」

菫は二人を部屋に招き入れ、嬉しそうに幼虫を鉢の中に置く。

昼顔は畳の上に腰を下ろした。

「確か、カブトムシやクワガタムシの幼虫がこんなのじゃなかった? だから持ってきたんだけど」

「よくご存知ですね。でもこの子は畑の中にいたんですよね? それだとカナブンかコガネムシだと思います……あっ、あとから少し畑の土を分けて貰ってもいいですかっ?」

「もちろんいいよ」

昼顔は優しく頷き、部屋を見渡した。

机の上や棚の上、壁に至るまで所狭しと虫籠や土の入った鉢、竹筒に入れた昆虫標本などで埋め尽くされている。

「それにしても凄い数だね」

昼顔の呟きに瑞も同意する。

虫に囲まれて幸せそうにしている菫に訊ねた。

「こんなに飼っていると虫籠や餌が大変じゃないですか?」

「む、虫籠は撫子お兄さんが作ってくれるんです……餌は、確かに取るのが大変な時もありますけど……この子たちはぼくがここに連れてきたから」

そう言い、菫は愛らしくはにかむ。

瑞は柔らかく目を細めた。

「大事にしてるんですね」

「たまに、椿お兄さんや他のお兄さんも手伝ってくれます」

「……意外な人選ですね」

「確かに……椿なんて、わあ〜虫ぃ〜!? やだ〜! とか言ってそうですもん」

瑞と昼顔が笑って話していると、何かを手にした菫がいそいそと二人の前に座る。
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