• テキストサイズ

影の花

第3章 愛情は隠し味


「おい夕顔!」

「なんだよ、おっさんの代わりにオレが教えてやるだけだよ……」

夕顔と呼ばれた彼は萩の言葉をうっとおしそうに振り払い、瑞の前にしゃがみ込んだ。

「こういうことだよ、男同士でこーいうことすんの。ま、女もイけるけどな」

瑞に目線を合わせて笑うと、瑞の浴衣に手を差し込んだ。

片手で胸を撫で、もう片手を瑞の太腿に突く。

「……あ? 何固まってんだよ、ビビったか?」

瑞の目が丸くなる。

「男同士……!?」

驚いた顔で立ち上がり、

「ということは椿さんも、紫陽花さんも、桔梗さんも男性……!」

今まで出会った彼らを次々と指さし、隣の萩を見、

「萩さんは男性」

「まあな」

「桜さんもですか!?」

いえーいと手を振る彼らから、最後に桜に視線をやって驚愕した。

夕顔は細い眉を跳ね上げて桜を見る。

「なんだよ桜、お前まだそれも言ってねーのかよ!」

「だって〜! 瑞僕のこと女の子だって思ってるんだもん、言い出せなくて!」

「ンなのバレるに決まってんだろ! 厠も風呂も共同なんだから」

「そんなことおっきい声で言わないでよバカッ!」

「ッ、誰がバカだよ誰が! バカっつったら睡蓮だろうが!」

蚊帳の外でご飯を食べていた睡蓮と呼ばれた陰間がぶっと噴き出す。

口元を拭い、メガネを掛け直す。

「なんで僕の話になるんだそこで! 僕は関係ないだろう!」

声を張る睡蓮は端正な顔と水色の猫っ毛の短髪。

桃色の瞳も、存外長い睫毛や低い声も聡明そうだが、

「え〜……いや桜がバカって言うからつい」

夕顔は謝ることなく桜に責任転嫁する。

桜も当然ふいっとそっぽを向く。

「なんで僕のせいなの、僕は睡蓮くんにバカなんて言ってないもん。夕顔に言ったんだもん」

「おい夕顔! 訂正しろ!」

「いやだっておま」

「……お前らいいから黙れ!」

萩が無理やり三人のやり取りを断ち切る。

「とりあえず今いるやつだけ、ざっくり教えとく。もう疲れてきたからな……」
/ 402ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp