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影の花

第23章 恋の魔法


影の花にある猫の額程の小さな畑。

昼顔は固くなった土を鍬で耕し、ふうと一息ついた。

腕まくりをし、首に巻いた手ぬぐいで額の汗を拭う。

「さ……頑張るぞ!」

大きく鍬を振り上げたところで、

「おっと」

柔らかく解れた土の中に白っぽい幼虫がいることに気が付く。

昼顔は鍬の先で土を掻き分けると、そっと身をかがめる。

小さくムクムクとしたそれを、優しく拾い上げた。

「それ、どうするんですか?」

そこに通りがかった瑞が声をかける。

昼顔は幼虫を片手に顔を上げた。

「瑞さん。ああ……これは、あげたら喜ぶかと思って」

瑞は昼顔の返答に少し考えた後、閃いた顔になる。

ぽんと手を叩いた。

「菫さんに、ですか?」

昼顔は笑顔で頷いた。

「菫くーん」

昼顔は畑仕事を中断し、瑞と一緒に菫の部屋に向かう。

名前を呼ぶと、菫が不思議そうに部屋から顔を覗かせた。

「昼顔お兄さん……に、瑞お兄さん? どうしましたか」

「はいこれ。菫くんが喜ぶかと思って」

「私はその付き添いです」

昼顔が菫に手を差し出す。

菫は昼顔の手の中を覗き込み、みるみるうちに表情を輝かせる。
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