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影の花

第22章 雌雄を決さない


「な、なんですか急に……っ」

「ん〜……?」

瑞の声に反応して体を捩る朝顔のお腹を撫でながら牡丹を見返す。

牡丹は真面目な顔で続ける。

「普通、男の客は若くて可愛らしい陰間が好きだ。女の格好をさせて楽しむ……陰間は花に喩えられるが、歳を取った陰間は散る花と言われる。男の客もほとんどなくなって、女相手に変わる」

牡丹は言いながら、

「ここの店主も、大人になった陰間には辛く当たる……売れなくなるし、可愛くないから。俺もそうだった」

無意識に自分の骨ばった手を撫でた。

覗いた手首には旧い火傷の痕がある。

特徴的な円形をしたそれが、煙管の火皿を押し付けられたものだと心当った瑞は息を飲んだ。

「……それで、瑞は俺みたいなゴツい男は嫌か気になった」

牡丹は言い終えると、改めて瑞の顔を見つめる。

「わ……私は……」

射抜くような銀色の瞳に、瑞は顔を赤らめる。

「嫌じゃないです……他の方も、牡丹さんも、同じく素敵だと思います……」

「じゃあ、男が好きなのか?」

無意識に避け続けていた問いに、

「……はい……」

こく、と頷いた。

「俺相手でも興奮するのか」

「も、もう察してくださいよ!」

真正面からの質問に瑞は赤面する。

牡丹は瑞の反応に微かに目付きを緩め、

「……そうか」

表情を綻ばせた。

「あ……でも、牡丹さん、今でも可愛いと思いますが……女装されても良いと思います」

遠慮がちに吐かれた言葉に、牡丹は自分の筋肉質な腕をさする。

逞しく張った胸元を撫で、澄んだ目で瑞を見つめた。

「瑞はただの変態か?」

「うッ!」
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