第22章 雌雄を決さない
椿と桜がコソコソと悪口を言っていると薊にひと睨みされ、慌てて顔を背ける。
藤は百合にも顔を向けるも、
「じゃあ百合さんは?」
「俺ちゃんも遠慮しとくう〜」
百合は笑って手を振った。
二人は酒や賭け事、女遊びの話をしながら去っていく。
「ほんとつまんない男ねえ」
飲む打つ買うを体現したかのような二人の会話に、蘭はうんざりした顔で呟いた。
そこに通りがかった牡丹。
「あら牡丹ちゃん。アナタも来る? 久しぶりに髪結ってあげるわよ」
蘭はにっこりと微笑み、手招きする。
「牡丹さんの髪を結った姿、見たいな〜」
「うんうん、牡丹にいも可愛くしなきゃ!」
牡丹は立ち止まって部屋の中を見る。
流行りの化粧品、可愛らしい小物、新しい帯、甘いお菓子。
華やかな服でこちらを見上げる四人に思わず目を逸らし、
「俺はいい……」
その場を後にする。
椿と桜は障子から顔を出し、牡丹の後ろ姿を見る。
肩幅のある頑丈な体つき、よく日に焼けた肌。
根元から左右に分かれた白と黒の二色の髪は無造作に乱れている。
「牡丹にいって無骨だよねえ」
「男らしいよね」
薊や百合と違い、牡丹の素っ気ない態度を好意的に語り合う二人。
「うーん……そうかなあ」
藤は苦笑いし、蘭はため息をついた。