第21章 魔が差す
「ふむ……椿くん、これ……どのくらい飲ませたんだい?」
「……全部」
「全部かい!?」
蓮華は驚愕した。
集まっていた陰間たちもざわめく。
「瑞さん、帆柱丸一箱全部飲んだんだっテ」
「昼顔おにいちゃん、帆柱丸ってなあに?」
「え!? え、えーっとそれは……」
「媚薬や媚薬。え〜気持ちになれるお薬やで」
「ちょっとおお!」
盛り上がる陰間たち、興奮冷めやらぬ瑞。
そんな光景に、桜は呆れ顔で口を開いた。
「しょうがないなあ椿ちゃんは。瑞はボクが面倒見てあげる。ボクのお部屋に行こ?」
すかさず菖蒲も手を上げる。
「そっ、それならおれの部屋に……!」
「あ、主様! 蒲公英にお任せ下さい! 蒲公英、夜を徹して主様に尽くします!」
またとない機会に蒲公英も飛びつき、やいのやいのと言い争う陰間たち。
椿は唖然としていたものの、泣き声を上げた。
「待ってよお、ボクが責任取るべきでしょ!? 勝手に瑞を連れてかないでよお!」
「それを言うなら僕にも責任があるということになるね」
うんうんと頷く蓮華。
撫子は布団でぐるぐる巻きにされた蓮華を冷めた目で見下ろす。
「蓮華ほんとに大概にせえよ……」
「じゃんけんで決めよう!」
いつの間にやら全員総出のじゃんけん大会が始まる。
「だ……誰でもいいから……というか、私を一人にしてくださいぃ……」
瑞はどうしようもない昂りを抱えたまま、切なげに呻いた。