第21章 魔が差す
「おいコラァ!」
その瞬間、怒声と共に障子が開く。
そこには、大勢の陰間たちが立っていた。
「椿ちゃん〜……? ぼくの料理に一服盛ったらしいねえ……!」
紫陽花はにこにこと目を細めたまま、椿を見下ろす。
「な、なんでそれを……」
椿が動揺していると、目の前に布団で簀巻きにされた蓮華が転がってきた。
「バレちゃったよ。ごめんね、椿くん」
「蓮華お前もっと反省せえ」
ふふっと微笑む蓮華に、撫子は顔を顰める。
「瑞、大丈夫か? とんだ目にあったなあおい」
やや伸びた前髪の下、左目に眼帯をした薊が前に出る。
可笑しそうに言って瑞の肩を叩くと、へらっと笑いかけた。
「……薊さんっ!」
「うおおっ!?」
瑞は勢いよく薊に抱きついた。
「誰でもいいのかてめぇは!」
夕顔が瑞を引き剥がそうと両肩に手を掛けると、
「ゆ……夕顔さん……」
瑞はぼーっとした表情で振り向く。
夕顔をキツく抱き締めた。
「おおおおい! ひっ、人前でバカ、やめろ!」
「やばいやばい! 瑞さん止めねえと!」
「兄やんあかんてえ!」
完全に歯止めの利かなくなった瑞を数人がかりで捕え、
「う……ッ、ふうー…… 」
床柱に縄で括り付けた。