第21章 魔が差す
椿は拳を握り、固唾を飲んで見守る。
瑞は訝しげにするも、紫陽花の方をちらりと見る。
そのまま黙って汁を飲み干した。
椿はふーっと息を吐き、胸を撫で下ろす。
晴れやかな顔で呟いた。
「良かったあ、紫陽花にいが食事当番で……」
「え〜なになに〜! 椿ちゃんそんなにぼくの作ったご飯が美味しい〜?」
「うんっ! とーっても美味しいよお!」
椿は満面の笑みで頷き、ぱくぱくと料理を頬張る。
紫陽花は嬉しそうな笑顔を浮かべる。
いよいよ他の陰間達も椿の異変に気が付き、ゴクッと生唾を飲んだ。
「な、なんやて」
「やっぱり変よあの子!」
最大の懸念事項だった夕食を無事に終え、鼻歌交じりに座敷を出る。
「怖いくらいに機嫌が良いですね……」
「……なんかあるんじゃねえの?」
椿は土間に行くと盥に水を張り、柘榴の皮で出来た特性の磨き粉で身体を洗い始める。
糠袋を使って髪を洗い、笹竹の灰で念入りに歯を磨く。
濡れた体と髪を拭き、真新しい下着ととっておきの香を焚いた小袖を身につける。
眉を綺麗に整え、化粧水と白粉、紅を使って化粧をする。
櫛で丁寧に髪を梳き、花の髪飾りを着けて、鏡ににっこりと微笑んだ。
「……うん! 最高に可愛いねっ」
しずしずと瑞の部屋に向かった。