• テキストサイズ

影の花

第21章 魔が差す


夕方、椿は夕食の膳を座敷に運ぶ紫陽花に声をかけた。

「これ、瑞にあげる分?」

「うん、そうだけどお……それがどうかしたの〜?」

「ボ、ボクが運んであげる! 紫陽花にいは休んでて!」

きょとんとする紫陽花から膳を奪い取り、人目につかないところで足を止める。

廊下の隅に隠れ、周囲を見渡しながら袂から例の小箱を取り出した。

「これを入れたら、いいんだよね……蓮華にいの秘密兵器! 帆柱丸……!」

蓋を開くと、妖しげな黒っぽい丸薬が幾つも入っている。

それを意気揚々と摘んだところで、椿は黙り込んだ。

「……これほんとに飲ませて大丈夫なのかなあ。よく考えると蓮華にいのお墨付きだもん……瑞死んだりしないよね……」

思いあぐねていると、

「椿。どうしたそんなところで」

睡蓮からぽんと背中を叩かれた。

「わあッ!」

吃驚して飛び上がり、勢い余った椿の手から薬が零れ落ちる。

幸か不幸か、手から落ちたそれは全て汁物に吸い込まれていった。

椿は硬直するも、

「なんだ、急に大きな声を出して……!」

椿の大声に目を丸くする睡蓮から逃げるように駆け出した。

「ななななんでもないよーッ!」
/ 402ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp