第21章 魔が差す
蓮華は腰を上げると、椿の前を通り過ぎ、
「少し待ってくれるかい? 良い物をあげよう」
文机の引き出しを開いた。
引き出しの中をゴソゴソと探り、小さな小箱を取り出す。
箱には帆柱丸と書かれている。
「はい、椿くん」
「なあに? これ」
椿は蓮華に手渡されたそれを両手で持ち、はてなといった顔で蓮華を見る。
蓮華はにこりと笑った。
「ちょっとした秘密兵器さ。当日はこれを瑞くんに呑ませてから迫ってみると良いよ」
「へー……」
「頑張って。君の魅力を存分に発揮すれば、どんな人も骨抜きにされると思うよ」
椿はぱっと表情を輝かせてお礼を言うと、
「う、うん! ありがとう、蓮華にい!」
蓮華の手がひたりと肩に添えられた。
「じゃあ……早速、練習を始めようか」
蓮華の目はうっとりとして、興奮に息が荒い。
「ちょうど試したかった道具も沢山あるんだ。椿くんはとっても可愛いからね、僕も楽しみだよ」
椿の顔が引き攣った。