第21章 魔が差す
「いや、続けて」
「それでね、なんでもボクに聞いてねって言ってるのに、瑞ったらぜーんぜんボクのこと頼りにしないしさあ。すぐに萩にいとか蘭ねえの所に聞きに行くの!」
椿は桜色の頬をふくらませた。
蓮華は椿を改めて見つめる。
小柄な体躯、華奢な手足。
女子と見間違うような可愛らしい顔立ちに、毛先の跳ねた栗色の髪。
懸命に動く小さな口、大きな瞳。
蓮華は優しい目で微笑んだ。
「……蓮華にい、なーにその目」
生暖かい視線に気がついた椿は蓮華を軽く睨む。
「いいや? それで、僕はどうしたら君の力になれるのかな」
椿は大きく頷き、蓮華を見据えた。
「あのね……蓮華にいの凄い技を教えて欲しいの!」
「凄い技?」
「そう、それでえ瑞をメロメロにしちゃうの! 瑞の気持ちいいところとか、どうすれば喜ぶかとか、ボクがどんな格好をしたらいいのかとか!」
椿は目をキラキラと輝かせて言う。
蓮華は笑みを携えて頷いた。
「ああ、なるほどね。君に殿方の悦ばせ方を指南すればいいんだね?」
「いつもは蓮華にいのこと、碌に働きもしないでスケベな事ばっかしてて睡蓮にいにも見限られてて影の花の全員から呆れられてるいんぽんだって軽蔑してるけどお、もうボクにはこれしかないの! だからお願い!」
「酷いな……」
「それでえ、ボクが瑞の一番になるの! そしたら瑞が他の子とお話しててもイライラしない気がするの」
そこまで言い、椿は得意げに胸を張る。