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影の花

第21章 魔が差す


ある日、椿は蓮華の部屋の前に立ち、何かを考え込んでいた。

部屋の前でじっと固まっている椿。

小さな人影に気がついた蓮華は顔を上げた。

「そこの君、どうしたのかな。何か用事かい?」

「椿だよ。蓮華にい、ちょっといーい?」

蓮華は障子を開き、優しく微笑んだ。

「もちろんいいよ。それにしても、君が僕の部屋に来るとは珍しいね」

椿を招き入れると、不思議そうに小首を捻る。

椿は蓮華の正面に、俯きがちに正座で座る。

モジモジと膝を擦り合わせた。

「ん……相談があるの」

「それが僕にしか出来ない相談って訳かい? いいよ、話を聞こうか」

蓮華が穏やかな調子で話を促すと、椿はこくんと頷いた。

「なんだかね、瑞にイライラするの」

「へえ。それはまたどうしてだろうね。彼は君のお気に入りだっただろう?」

「うーん……あのね、みんなが仲良くするのって嬉しいことでしょ? それなのにね、瑞が他の子と仲良くしてると嫌なの。ボクすっごく嫌な気持ちになるの。だから、瑞にツンツンってしちゃうの……」

蓮華の問いかけに一生懸命に答え、しょげたように眦を下げた。

蓮華は微笑んで椿の話に耳を傾ける。

椿は話しながら、ふと首を捻った。

「夕顔にいも最近変なんだよね……? あんなに瑞のこと嫌ってたのに、この前なんか瑞に簪をあげてたんだよ! お下がりって言ってたけど、簪を贈るなんてまるで求婚だよねえ」

「多分、最初から嫌ってた訳じゃないんじゃないかなあ……」

蓮華が静かに洩らすと、椿はきょとんとした顔で瞬きをする。
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