第20章 開花
夕顔の眉が跳ねた。
紅潮した頬を更に赤らめ、目の端を釣り上げる。
「つッ! 何……やってんだ、てめぇ……!」
「夕顔さん、本気で拒んでいませんよね」
「な……」
「私にもそのくらいお見通しですよ」
瑞は悪戯っぽく言い、夕顔のモノを握った手を上下する。
二人の手が交差し、お互いに摩りながら熱っぽい息を零す。
部屋には荒い呼吸音と微かな水音が響き、それに時折衣擦れの音が重なる。
どちらともなく見つめ合い、休むことなく手を上下しながら唇を重ねた。
「ン……っ」
「ふ、ぅ……」
火照った唇をちゅっちゅっと重ね合わせ、差し交わした手で扱き立てる。
「うッ……!」
ほとんど同じくして、両者の身体に力が入る。
夕顔が奥歯を噛み締め、男根を脈打たせた。
瑞も息を止めて、溜め込んでいた精を一気に吐き出す。
お互いの熱が跳ね、溢れた白濁が畳を汚す。
「あ……畳が、汚れてしまいましたね……夕顔さん、服も……」
夕顔はぽやんとした目付きで蕩けきっている。
「……夕顔さん?」
瑞がもう一度名前を呼ぶと夕顔ははっとした顔になり、
「ぶっ!」
瑞の顔面に枕を叩きつけた。
「な、何するんですか!」
夕顔はすっくと立ち上がり、顔を真っ赤にして怒鳴る。
「うるせえ! さっさと出ろクソ!」
「私の部屋です!」
「じゃあオレが出るわ! バーカ!」
そう言い背を向けると、荒々しく立ち去っていく。
乱暴に障子を閉めた。
「ええ……」
一人取り残された瑞は困惑しきった声を洩らした。
「あークソ! クソがあ……!」
夕顔は自分の部屋に戻り、布団を被ってのたうち回る。
「……有り得ねえ、なんでオレ……」
顔を赤く染めたまま、自分の唇に指先を当てた。