第19章 咲夜
「そうなんですね……、じゃあ、萩さんは大丈夫ですか?」
「うん、流石に一口だもん。こんなよわよわでよく陰間やってたよね〜、こいつ」
百合は笑い混じりに萩の逞しい肩をぺしぺしと叩く。
「ゆ……り、お前……」
萩は視線を上げ、恨みがましい目で見上げる。
百合は真顔で萩を見下ろし、
「あ? なーに? もう一口いっとくう?」
なみなみと酒の入ったとっくりを掴んだ。
萩の顔が青ざめ、ブンブンと首を振る。
「呑むか、呑まねーかって言ってんの〜。もっかい口移しで呑ませてやろっかあ」
「待てっ! やめろ! もう呑まないい……!」
「あはは〜、超おもしれ〜」
百合はケタケタと肩を揺らし、楽しそうに萩に絡み続ける。
「なかなか手強そうな方ですね……」
「手強いのは百合にいだけじゃないけどねー……」
瑞の呟きに、椿はため息混じりに答える。
瑞をじっと見、三角座りで膝を抱える。
椿は小さく頬を膨らませた。
「椿さん、な、何か怒ってますか?」
「別にいー」