第19章 咲夜
そんな中、部屋の障子が開く。
「うわっお酒臭っ! まーた百合にい呑んでんのお? ほんとダメダメなんだからあ」
椿が呆れ顔で呟いた。
「あ、チビ助の代表みたいなのが来たあ〜。椿すけ、来い来い」
「なにそれえ……って、瑞〜! だいじょうぶ!?」
椿が百合から視線を離すと、牡丹に襲われているとしか見えない瑞が目に飛び込んできた。
「助……たす、あッ、ぁああ……」
椿は慌てて二人の間に入り、完全に酔っ払っている牡丹を引き剥がす。
「牡丹にい、おしまいだよー、おしまい。瑞困ってるから、ね」
「ん……ああ……」
ぼーっとしている牡丹がよろけたように立ち上がる。
瑞と離れると部屋の隅で猫のように丸まり、寝息を立て始めた。
そんな姿を見届け、椿はきっと百合を睨む。
「もー、百合にい瑞を虐めないでよねえ!」
「あ……ううぅ……」
瑞は椿の腕の中で赤面したまま、ぶくぶくと泡を吹いている。
「虐めてね〜しい」
夜更け過ぎにも関わらず、明るく賑やかしい部屋。
騒ぎを聞き付けた萩が百合の部屋を訪れた。
ガラッと障子を開け、仁王立ちで百合を見る。