第19章 咲夜
「ほら牡丹ちー、おみずが来たよ〜っと」
瑞と肩を組んだまま、元気良く自室の障子を開く。
二人で酒盛りをしていたらしく、既に真っ赤な顔で撃沈している牡丹に声を掛けた。
「……ン」
牡丹はとろんとした目で身体を起こす。
濃紺の着流しは崩れ、白黒の髪も乱れている。
「牡丹さん、大丈夫ですか? 水を持ってきましょうか」
瑞が心配そうに牡丹の前に座り込み、顔を覗く。
牡丹はぼんやりと見返し、
「わっ!?」
瑞の首の後ろに両手を伸ばした。
そのまま瑞の顔を自分の方に引き寄せると、無言で唇を尖らせた。
「わあーッ! ちょちょちょちょ!」
瑞は大慌てで足を踏ん張り、牡丹の肩を押して食い止める。
百合は二人の様子を眺め、しみじみと呟く。
「あ〜……眼福だわァ」
「な、何がですか!?」
「ん? いいから続けて続けて〜」
へらっと笑って手を振る百合。
瑞は必死に押さえようとするも、牡丹の手が襟元に伸びる。
際どい部分を漁り始めた。
瑞の背筋が跳ねる。
「いやっ……あっ! 牡丹さんんっ!」
百合はお猪口片手に立ち上がり、面白そうに瑞を覗き込む。
「それとも牡丹ちーよりもっとチビが好み〜? 他の奴連れてこよっか」
「違ッ、そういうことを言ってるんじゃ、アッ、う! 待ってくださいぃ……!」
瑞の足腰が崩れ始め、段々と牡丹に押されていく。
百合はケラケラと笑い声を上げた。