第18章 イタミイリマス
「貴方は、桃の……言葉が、分かるんですか……?」
瑞は振り返り、口元に手を当てて考え込む。
ゆっくりと口を開いた。
「桃さん……、話してたら、はいといいえが分かるみたいなんですよね。私に、伝えようともしてくれるんです。それで、まあ。普段の会話とは少し勝手が違いますし、実は、所々分からない部分もあったのですが……桃さんの顔や声から、楽しいとか、悲しいとか、何となく分かるんです」
瑞はそう言い、声を立てずに、優しく顔を綻ばせた。
「勿論、躑躅さんには構いませんけどね」
躑躅は愕然とする。
瑞の微笑みが、幾度となく傷つき、頑なになった躑躅の心を照らす。
雪解けのように優しく、冷え切った心を融かし、深い傷が癒えていく。
躑躅は膝から崩れ落ち、
「うっ……うっ、ひ、ぐ……」
嗚咽を漏らした。
「だっ、大丈夫ですか!?」
瑞は慌てて躑躅の元に寄り、背中をさする。
「私、何か躑躅さんに悪いことを……」
躑躅は包帯を涙で濡らしながら、首を横に振った。
「瑞、さん……」
「は、はい」
「ありがとう、ございます……」
「え……」
きょとんとする瑞と、心配そうに彷徨く桃。
躑躅は抑えよう抑えようとしても、どうにも涙を止められず、咽び泣きを続けた。