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影の花

第18章 イタミイリマス


桃は不穏な雰囲気にキョロキョロと辺りを見渡し、瑞にしがみついた。

「うう……躑躅……? 瑞、っう、あ」

「桃さん……」

躑躅はくすりと口角を歪めて笑う。

「桃は人懐っこいでしょう? 初対面にも関わらずベタベタと引っ付いて、貴方に懐いておりますね。桃を外に出せば、このように訳もわからずに人に付いて行くでしょう。人に好かれたいばかりに、どんな言うことも聞くでしょう」

萩は心苦しそうに黙りこくっている。

「それが肌を彫る激痛であっても。そんなもの、いくら綺麗でも、どこまで桃の意思かは分かりませんよ。駆け出しの彫り師の練習台にでもされたのでしょう」

躑躅は桃に向かって両手を広げた。

「おいで、桃」

桃は瑞と躑躅を見比べ、ゆっくりと躑躅の元に向かう。

躑躅は片手で桃の手を握り、

「この傷だって……」

もう片方の手で自分の目を覆う包帯に触れた。

指先を離し、瑞に頭を下げた。

「申し訳ございません、子供のように貴方に当たったりして……」

「いえ……私こそ、すみません……」

「萩さん。頭を冷やしたいので、桃と二人にしてくれませんか」

「う……」

桃は何か言いたげに萩を見るも、躑躅に視線を戻し、ぎゅっと口を結んだ。

「ああ。疲れて帰ってきてるところにすまなかったな、躑躅。桃もありがとうな」

「ありがとうございました」

「……行くか、瑞」

瑞は頷き、萩と共に部屋を後にした。
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