第18章 イタミイリマス
「うー……」
「すげえ絵面だな……」
萩が笑い混じりに見守っていると、
「萩さん……桃と何をやっているのですか」
部屋に張り詰めた声が響いた。
「躑躅。帰ってきたのか」
視線の先には、桃よりやや歳上に見える青年が口を引き結んで立っている。
桃よりも頭一つ程低身ながら、か細い手足はすらりと長く、それを感じさせない。
真っ白な髪を童女のようなおかっぱに切り揃え、前髪の下には真っ白な包帯を巻き付けていた。
無論、両目は包帯に隠れている。
真っ赤な振袖と、真っ赤な紅を刺した唇。
それを引き立てる白髪と白い肌。
落ち着いた声色、影のある雰囲気。
「ええ。萩さん、そちらの方は」
躑躅は声や空気を感じ取り、瑞の方に顔を向ける。
「こいつは新しい下働きの瑞だ。桃と躑躅に挨拶に来たんだ」
「初めまして! 瑞です、よろしくお願いします」
躑躅は微動だにせず、瑞に体を向けたまま。
「……貴方。先程、桃の彫り物を褒めていましたね?」
小さく口を開いた。
躑躅の声からは敵対心すら読み取れる。
瑞は躑躅に気圧されそうになりながらも、はいと答えた。