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影の花

第18章 イタミイリマス


桃はにっこりと笑って、瑞と手を絡める。

「瑞!」

たどたどしい言い方で言い、繋いだ手をブンブンと振る。

瑞はきゅんと胸を弾ませ、自分よりも高い位置にある桃の頭をよしよしと撫でる。

桃は嬉しそうにし、瑞が撫でやすいように頭を下げて、手のひらにめいっぱい押し付ける。

「……桃さんは犬みたいですね……」

小さく呟くと、萩は苦笑する。

「悪い奴じゃねえんだよ、その……」

頭を掻き掻き、言葉を絞り出した。

「ビックリしたかもしれねえけど、分かってやってくれると嬉しい」

「はい。よろしくお願いしますね、桃さん」

「う」

瑞は優しく微笑み、改めて桃を見る。

逞しい身体に刻まれた艶やかな彫り物。

胸元に飛ぶ漆黒の蝶。

首元に伸びる複雑な模様、喉に見事に掘られた額彫り。

手首と足首に入った波模様。

瑞は桃を見上げ、浮き出た喉仏に指先を重ねる。

「桃さんは蝶の彫り物を入れているんですね。喉のこれは何でしょうか……」

「ぁ、あ……っ」

桃の顔が赤くなる。

瑞はそっと手を離し、綺麗です、とゆっくりと告げる。

桃は、ぐるると喉を鳴らすかのように低く唸り、目を細めた。
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